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  1. あの人に聞きたい!

あの人に聞きたい

質問

【若きホテリエからの相談】
最近、私たちの宿泊課でこんな問題が発生しております。
(1)「課長、係長の発想が異なり、スタッフが係長から指示を受け行動を起こすと、課長に怒られる。またその反対もある。」
(2)「(1)のことが発端となり、退職を考える仲間が急増している。」
(3)「私たち主任クラスは、ムチを打って部下に指導する光景が見られないと評価につながらないと課長から言われ戸惑っている。」
(4)「(1)(2)(3)のこともあり、仲間達が暗くなってしまっている。」

先日、私も係長から仕事を依頼され独自の発想で行ったところ、課長の見解とは違い「お前バカか?常識で考えろ。支配人に見つかったらまた激怒されるだろ」と注意され、係長からは「確認しなかった俺も悪いけど、君に任せて失敗した」と嘆かれました。

一体、何が正しくて何が間違っているのかが明確ではなく、忍耐で今はじっと耐えて我慢する時期だと考えておりますが、将来性が見えません。本当なら自分たち仲間同士で考えなければいけないと思いますが、先輩達の視点から見てどうしていかなければならないかをお伺いしたいと思いお伺いしました。宜しくお願いします。

回答者

飯島幸親氏
飯島幸親氏
回答を見る
田中勝氏
田中勝氏
株式会社 MT J-ホスピタリティ
代表取締役
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飯島幸親氏 回答

今回のご相談は日本特有でよく聞く話ですし、私も実際に経験しましたが日本の仕事社会では日常的に起こり得る現実で、即改善すべき課題だと考えます。

まず、その企業のトップ・マネジメントのリーダーシップに大きな疑問を感じます。
企業理念、ビジョン、ミッションは明確に示され社員全員の末端まで行き届いているのでしょうか?どこの企業経営者、運営トップが口を揃えて言い続けている、大切な「社内のコミュニケーション」はどのように行われているのかとても心配です。

*組織系統:
総支配人をはじめとする,副支配人、部長、課長、係長、主任、一般社員まで、の意思決定、指示系統システムが確立されてない。

指示系統:
コミュニケーション・ラインはガラス張りで解り易く末端まで理解し伝わっているか、定期的にどのような方法がとられ、その結果確認は?GMをはじめ各幹部の仕事上の責任が果たされていないと強く問われます。

欧米では良く "The fish spoiled form the head"「企業はトップによって決まる」全くその通りで、グローバル・ビジネスではあってはならないことです。

*権限の移譲:
各レベル間での仕事の分担、責任範囲が、事前に詳細に定めてないことが主な原因でスムーズに行われず、その結果ばらつきがある。ジョブ・デイスクリプション(仕事分担責任)GMを含め各自の仕事責任内容を出来るだけ明確に文書化することが早急に必要です。

これが整備されてないのであれば、それに連動する評価制度、賃金体系、人事などは明確な尺度がなく社員に公平な運営が不可能です。上司が24時間マイクロマネジメントすることは先ず不可能で、指示待ちの社員が多くなると企業の進歩、発展は望めません。権限の移譲を潤滑に行う事が大事です。

*エンパワーメント:
社員をエンパワーすることによって社内の活性化は進み、仕事環境が格段と良くなり、各自のやる気にも繋がり、社員にとっては明るく、楽しい仕事環境になります。結果としてお客様にもより良いサービスが提供され、顧客満足度が上がり、リピーター、収益にと前向きなポジテイブビジネス環境が生まれ、ウイン・ウインの状況になります。

*社員育成重視:
明確なトレーニング・プログラムが事前に準備されており計画的に行われていることが、まず必要で、当然トレーニング費用は事前に予算に組み込まれなければなりません。
今までのように見て覚えろとか、直接現場に入っても当然あるべき明瞭な指導が行われず、適切で解りやすい指導マユアルやSOP(スタンダード・オペレーション・プロシージャ―)などのルールも準備されず、その都度最前線の現場の担当主任クラスにすべてを押しつけるやり方はグローバルスタンダードから見て完全に間違ってます。

*日本独特の上下の関係:
欧米でも“チェーン・オブ・コマンド”(組織図の役職)権限は重視されますが同時に責任ある行動が求められます。経験、熟練度からも、指示、命令、号令をかけるだけでなく現場主義で目に見えるマネジメント・スタイルが求められます。
上司として、仕事が出来るのみでなく常に公平で皆に人望があり、後身の指導が上手、最終の責任は率先して取る姿勢が大切です。

*コンプライアンス、法令順守:
マネジメントの使命、責任として企業のコンプライエンスを守る、実行する、出来ていない部分は何故なのかを追求して改善につなげる責任がある。(仕事における公平でフェアーな職場を保証する)セクハラ、パワハラ(上司による脅し、威嚇、暴言、言葉の暴力含む)、相手が嫌だと感じる、差別、上司としての責任が果たせていない等は、欧米では深刻で、メンタルストレスやうつ病に進むケースが多く、このような場合はまず、その上司からその責任上、間違いなく退社に追い込まれます。

*ホスピタリテイ:
ホスピタリテイの原点は「おもてなしの気持ちをお届けする」ですが、そのためにもまず「人が好き」でなくてはなりません。ビジネスにあっては、お客様には当たり前ですが、それを提供する我々側にも当然あるべきです。

仕事での上下の関係、同僚、部下、皆が尊敬し間柄が大切で、そのためにも双方が意識して日常の努力を重ねる必要があります。
欧米のホスピタリテイ業界はお客様だけではなく、働く側にも、若々しい、明るく、楽しく仕事ができる将来がある職場です。日本もそのような仕事環境に改善していくことが働く者の願いで、業界の指導者の意識改革と行動が早急に求められてます。

*社員満足度調査(AOS、アソシエート・オピニオン・サーベイ):
マネージメントを含め、全社員にアンケートを実施して健全成功企業としての当然あるべき責任が果たされているか、マネジメントの責任、と権限が正しく発揮されているか、各社員の受け止め方、社員の提言などを社員の評価制度が公平かなど、仕事に満足しているかどうかを確認しあう双方にとって必要なプロセスでもありチャンスでもあります。

緊急の課題がなければ、最低でも年に一回は実施して内容を分析、回答し早急に改善することがマネジメントとして重要です。調査は外部の専門会社に依頼して厳正に、全員参加が理想、プライバシーが確約されますが、その結果は課題点が浮き彫りになり参加者全員に報告され、改善、前進の為に双方が共に協力する体制が出来上がります。

*退職を考える社員が多い:
人材がすべての社会、若年労働者の減少、若手の社員が希少価値が高まっている現実、社員を大切に、楽しく満足して働ける環境作りはトップの役割、リーダーシップの一番大事な事で責任重大でもあります。

*マネジメントのオフィスのドアーはオープン:
上司のオフィスドアーは開いた状態にして、社員が気軽に立ち寄れる、事前に時間を予約し、個人面談”ラプセッション”を、上司は聞く耳を持ち、真剣に答える姿勢が大切。 ヒューマン・リソース部門の拡充、旧態依然の総務、人事部機能のみではなく社員が気軽に立ち寄れる、かれらの声を常に聞く部署で有るべきです。

*上司は正直:
上司として根本的に大事なことはできるだけ”仕事上のうそ”をつかないことである。尊敬、信頼の大事な要素です。ただし、人間だれでも間違いが起こる、その場合は、間髪いれずに相手にそのことを謝って伝えることが大切です。

*エギジット・インタビュー:
退職者が有った場合は必ずエギジット・インタビューをしてその理由を出来るだけ話してもらい今後の改善につなげる事が大事です。

*自分を売り込め:
私は退職者すべて否定するものではない、本来日本人は優秀、とくにグローバル時代では普通のことで実力のある人にとっては個々の能力、可能性を高めるチャンスです。日本といわず世界は広い、欧米でも中国でも、どこへでも大いに挑戦することをお勧めします。

飯島幸親
プロフィール
飯島幸親(いいじま ゆきちか)
1942年東京生まれ。成城大学経済学部卒業後、帝国ホテル、札幌グランドホテルなどで料理人としてのキャリアをスタート。センチュリープラザホテル、ベルエア・カントリークラブなどを経て、シアトルマリオットホテル、サンディエゴ・マリオットホテル&マリーナで総料理長を歴任。
マリオット・コーポレート・シェフ・グループ・アドバイザリー・ボードメンバー。
2006年横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズに着任しホテル運営のグローバル化と社員を大切にする会社作りに貢献。結果として健全な利益体制基盤の確立(1年目の5億円目標を達成)現在は日本とサンディエゴを行き来しながらこれからの世界でグローバルに活躍できるホテリエを育成するために精力的に活動している。

田中勝氏 回答

お話を伺うと指示命令系統が2重になっていて、困っていると状況かな、と思いますが、いかがですか?しかし、このような事はどこの会社にあることではないでしょうか?

このご質問に正しい答えはないと思いますが、本質をよく考えることが解決の糸口になるのではないでしょうか?

本質とは、貴方の上司は組織上係長である、ということです。従って、当然のこととして組織で働く以上、周辺の余計なことに気を配ることなく係長の指示に従うことが全てではないでしょうか?

課長から直接指示を受けたら、出来れば事前、出来なかったなら事後にでも“課長からこのような指示を受けました”と係長に報告するのはあなたの義務です。係長から指示を受け、課長に怒られたら、“係長の指示でやりました”と課長に言えばいいのではないでしょうか?要は、余計なことを考えて、自分からも事を複雑にしているのでは?

日本の組織にはこのような話は多いですね。そこから、社内政治が始まり、不必要且つ非生産的な複雑さでフラストがたまり、疲れているサラリーマンが多いのでは。
このような環境では、物事を単純に割り切って考え、私の直属の上司は係長、という事実のみを考えて行動することが、組織的にも、個人の精神衛生上も一番良いのではと思います。強いて言うなら、指示されたことが今すぐやらなくても良いことなら、翌日にでも再度指示内容を係長に確認することがいいかも知れません。あまりひどい状況が続くようでしたら、課長・係長に“指示命令系統を明確にしてほしい”と上手にお願いをすることですね。

まあ、このケースは相談というより私には、サラリーマンに良くある“愚痴”としか取れません。“グローバルな視点ではどう対処するのか”というご質問ですが、欧米では、指示命令系統が一般的には明確ですが、とにかく自分の直属の上司の指示に従うことが原則です。欧米では、上司の力は絶対であり、上司の指示に従わない場合は、解雇の対象になります。但し社内には苦情処理機関(人事他)が存在しているケースもありますが、ご相談のケースは処理機関に訴えても、恐らく子供ではあるまいし、苦情として受けとってもらえないと思います。

私も海外で10年、外資系ホテルで15年マネジメント職を務めてきましたが、“アメリカでは”という出羽の守の話は鵜呑みにしない方がいいと思いますよ。“アメリカのフロント・クラークは”というように明確な事例ではなく、“アメリカのホテルでは”という様な一般論がアメリカまたアメリカ人の総てのケースに当てはまる訳ではありませんから。

例えば、アメリカのフロント係の多くは組合員であり、給与も2-3年に一度しか上がらないケースも多く、チップ収入もフロントはないので、給与だけでは食べていけません。従って、仕事が終わってから、ホテルの前のマクドナルドでアルバイトをしている人も結構います。アメリカのフロント係は、仕事を楽しんでいるというより、働いているホテル、そこにチャンスが無ければ、他のホテルに移って、より高いポジションに早く就き、生活水準を向上させること事を目的として働いていると思いますから、社内のつまらない政治に巻き込まれて頭を悩ます暇・余裕はないと思います。

彼らのいい所は、常に未来に対してポジティブな考え方を持って行動している事です。私からすれば、日本人はネガティブ志向だらけで、このまま行くと日本沈没ではないかと危惧しています。アメリカでは雇用はケースにもよりますが、日本のようにある程度保証されている訳ではないので、他の会社に移っても発揮できるスキル(ポータブル・スキル)を身につける事に熱心です。それと、日本のように「仕事が全て」、のような考え方ではなく、「人生を楽しむ」という幅広い価値観を持っているので、仕事で嫌な事があっても、休みには自分の生活をエンジョイして、楽しくあるいは楽しそうに仕事をしているように見えるのではないでしょうか。その意味では、あなたも幅広い価値観を持って人生を大いに楽しむ気持ちがあれば、ご相談頂いた悩みも大したこととは感じなくなるかも知れませんよ。それでも悩みが解消しないなら、転職することですね(そこでも同じようなことが起こるかも知れませんが)。
私なら悩む暇があったら英語の通信講座でもとって、誰も知らないうちに英語の達人を目指すと思います。

プロフィール
田中 勝(たなか まさる)
国内外でのホテルマネジメント経験を通じてグローバル・ホテル・マネジメントの手法を学ぶとともに、迎賓館支配人時代には数多くの国賓を迎える中でサービスの真髄を学ぶ。それらを生かして、東京・横浜のインターコンチネンタルホテルでは輝かしい実績を残し、インターナショナルな経営センスと独自の人柄により、ホテルスタッフからは「伝説的カリスマ総支配人」と呼ばれるなど、数々の伝説を持つ。現在はホテル産業経営塾塾長を務める傍ら、大学でも教鞭を取り、また、コンサルティングや講演で数々の実績を持つなど幅広く活躍している。
株式会社 MT J-ホスピタリティ 代表取締役 http://www.mt-jh.co.jp/
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