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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(4)
ヒルトンスペック

週刊ホテルレストラン 2011年4月22日号掲載

信じられない話だが、20数年前は外国人が満足するバスタブが日本製品にはなかった。山内氏は自身初のホテル工事としてヒルトン東京に携わることになるが、ヒルトンスペックをクリアするバスタブがない。そこにまた新しいドラマが始まった。

 ある日、住設機器メーカーのTOTOさんの営業部長さんが私を訪ねて来れられました。「ヒルトン東京のバスタブはぜひわが社にお願いします」というのです。しかし、ヒルトンスペックには日本のバスタブはどこも合致しませんでした。

 ヒルトンスペックは厳しく決められており、そのためバスタブもアメリカから輸入する段取りになっていたのです。それを聞いて担当者は飛んできたのです。

 当然水回りに関してはトップメーカーとして知られた存在ですし、わが社とも何年もの間お取引をいただいております。大事な取引会社と十分承知しておりましたが、ヒルトンスペックの高い壁がいかんともしがたかったのです。

 外国人の体格は大きく、それに見合うようなバスタブは日本にありません。外資系のホテルの仕事は常にこういった問題が付きまといます。しかし、TOTOさんのバイタリティーはすごいものでした。「ヒルトンスペックを上回るものを作りましょう」と逆提案してくれたのです。

 日本の規格とはまったく違うバスタブを新たに作るというのです。作るといっても簡単ではありません。納期に間に合わせることは絶対条件ですし、それには金型や製造ラインを新しく作ってやるほどの開発資金も必要です。

 しかし彼らはそれらをすべて「クリアします」、と約束してくれました。アメリカからのバスタブの輸入契約を結ぶ寸前でしたが、その熱意に動かされお願いすることになりました。

 「不可能を可能にする」という離れ業をTOTOさんはやってくれたのです。きっと厳しい状況での戦いだったのでしょう。頭の下がる思いです。仕事の進め方を見ていて、「仕事とはこうして作っていくものだ」と教えられました。

 先ほど“納期”という言葉を出しましたが、これは仕事を進めていくうえで大変重要な言葉です。依頼主からは「いつまでに仕上げてください」と仕事を頼まれます。私たちはその日までに建物の引き渡しを行なうにはと工事スケジュールを決めていきます。そうして着工日が決められます。

 私たちの現場の事務所は世界で約2000カ所あります。製造拠点がそれだけあるのですが、現場は刻々と完成に近づいていきますから常に流動的です。タイムリーに資材を搬送し、労働者を送り込む必要があります。

 タイムリーに資材を搬入するという意味では自動車メーカーと同じです。一種のアッセンブリーと言えるでしょうが、彼らとの違いはいくつかあります。発注者によって毎回つくる製品が異なるということが最たるものでしょう。当然のことながらすべてオーダーメードです。これらの仕事を確実に進めていくのはなんといっても人間関係が大切です。

 言うまでもないことですが、人間関係を良好に保つには信頼で結ばれていなければなりません。仕事を任せてもらうには信用がすべてです。何十億円、何百億円の仕事を発注するのに、目の前に製品はないのです。あるのは図面だけ。

 先ほどのTOTOさんとの仕事もこうした信頼関係をさらに強固にするものと思っています。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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