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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(9)
文化の違い

週刊ホテルレストラン 2011年7月8日号掲載

これまで多くの国を訪ねてきた山内社長。そこで感じたのは文化の違いについてであった。住む環境に合わせて、生活スタイルをつくり、コミュニケーションをとりながら“社会”をつくりあげてきた人類。その長い歴史の側面がいたるところに見え隠れしていた。

 これまで、海外のホテルで見聞したことを思うままに書いてきました。それぞれ何一つとして同じことはなく、思い出深い体験となっています。

 富士山と同じような標高にある、ペルー、クスコでのホテルライフ、世界の大富豪が避暑に集まるコモ湖畔でのリゾート体験、タキシードを着こなしレディを上手にリードするラッフルズホテルでのガラディナー、歴史ある台湾のホテルで大迫力の花火とともに迎えた年越し体験などなど。

 仕事にも参考になるような話題性の高いホテルに泊まるようにしていたので、どのホテルも、サービスは一流でした。ロビーで迎えてくれるホテルマンの笑顔も忘れがたいほどです。ハード面でも客室、レストラン、スパなどのクオリティーは、非常に高かったですね。またサービスの仕方がお国柄またはその地域によって違うのも面白いと思いました。

 あるとき、日本で、外資系の高級ホテルに泊まる機会がありました。そこで、湯船にお湯を張ろうとして気が付いたのですが、お湯用と水用の2本のバルブがあり、それぞれのバルブを調節してお湯の温度を調整する仕組みになっていました。一瞬「面倒だな、なぜ自動調節ではないのだろうか」と思いましたが、すぐに、「あ、このホテルは外資系だからだ」とすぐに合点がいきました。

 日本では、すでに当たり前に普及していますが、家庭も公共施設も自動的に一定の温度に調節することができるサーモスタットが採用されています。西洋のような2バルブ方式が採用されているのはあまり見たことがありません。

 しかし考えてみますと、海外でホテルに泊まると、ほとんど2バルブ方式が採用されているのです。もちろん海外でもサーモスタット技術はあります。ではなぜ外資系のホテルではあえて2バルブ方式がいまだ採用されているのでしょうか?

 それは、何かの間違いで熱湯が出てきた場合、責任問題が生じるからです。ホテルには、その国の言葉が分からない人も泊まるでしょう。操作に慣れていない人が泊まることもあります。万が一、火傷を負ってしまったら賠償問題に発展してしまいます。欧米ではこのように考えるのです。

 日本なら万が一火傷を被っても、自分の不注意がいけなかった、と自分の責任にして終わりにしてしまいがちです。高額な賠償を請求することは、ほとんどありえません。そして日本の文化では、わざわざバルブを二つにして温度調節の面倒な操作をお客さんに押し付けることはしません。しかも、万一火傷を被った場合の責任うんぬんなどという話は、まずありえないのです。

 バルブ一つとっても、こうした文化の違いを考えることも旅の楽しみの一つです。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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