週刊ホテルレストラン HOTERES WEB

  • TOP
  • ホテル&レストラン
  • 業界コラム
  • ホテルビジネスなんでも相談
  • バイヤーズガイド
  • HITS
  • ホテレス電子版
  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(12)
石の文化、木の文化

週刊ホテルレストラン 2011年8月26日号掲載

イスタンブールにあるアヤソフィア寺院の巨大ドームは、数度の破壊や崩落の度に再建され現在に至っている。バルセロナのサグラダファミリアは、百数十年をかけて今なお建設中。建築に対するヨーロッパの人たちの執念を感じざるを得ないと、山内氏は語る。

 トルコ・イスタンブールにあるアヤソフィア寺院は、キリスト教文化とイスラム教文化が共存する、多文化都市イスタンブールを代表する建築です。東ローマ帝国時代にキリスト教の大聖堂として建てられたもので、天井のモザイク画など芸術的な価値もさることながら、建築に携わる者として興味深いのは大きなドーム天井です。そこで、今回は建築の話題へと少し話を進めてみたいと思います。

 ドームの天井は床からの高さが50m以上。直径が約30m。歴史的建築のドームとしては世界屈指の大きさです。ドームは完成するととても堅固な構造ですが、建設途中は非常に不安定なのです。古典的なドーム建設は、最初にドームの荷重を支える支保工と呼ばれる架台を木組みでつくります。その上に順番に石を積み上げていき、最後にドームの頂上部分に“かんぬき石”を打ち込んで“ぎゅっと”石を締め上げます。しかし、ドームづくりが成功するかどうかは、支保工を撤去してみるまで分かりません。ドームの設計に計算ミスがあったり、石積みが不完全であったりすると、せっかく苦労してつくったドームが崩れ落ちてしまうからです。支保工の撤去もドームの荷重が偏らないように順番に慎重に行ないます。実際、アヤソフィアでは、支保工の解体途中にドームが轟音とともに崩壊する事故が7回も続いたという話です。怒り心頭に発した皇帝は「今度失敗したら技術者たち全員の首をはねる」と宣告。命がけの工事は8回目にしてようやく成功し、文字通り技術者の首がつながったと言われています。

 スペイン・バルセロナにあるサグラダファミリア教会が工事を始めてから100年以上たった今でも建設途中なのはご存じの通り。建設費のすべてを寄付金に頼っているためで、財政難で工事がストップしたことがこれまで何度かあったそうです。私は去年、20年ぶりにここを訪れましたが、驚いたことに現在制作中の彫刻のタッチが当時見たものとかなり違うのです。もともとの設計者、アントニオ・ガウディが詳細な設計図を残していなかったため、時代ごとに建築家や彫刻家がガウディのスタイルを踏襲しながら建設が進められているのだそうです。

 これらの荘厳な宗教建築を見るにつけて、ヨーロッパの人たちの建築に対する強い執念を感じざるをえません。木と紙でつくられた家に住んできた私たち日本人には彼らの「こだわり」はなかなか理解できないでしょう。

 「石造り」と言えば、ヨーロッパの大先輩にあたるのが古代エジプトです。カイロ近郊のギザにあるクフ王のピラミッドは、現在高さ約139m。底辺の長さ約230m。平均2.5tの石材を約270万個も積み上げて建造されています。完成したのは、紀元前2540年ごろ。4辺が正確に東西南北を向いており、測量技術もさることながら、動力で動く重機もない時代に、あれだけ巨大な建造物をつくってしまう技術の高さは計り知れません。当時の彼らの技術を知れば知るほど、現代の建築技術もそれほど威張れるものではないなとつくづく感じます。ピラミッドの中腹にある入り口から中に入ると、奥に石棺を納めた玄室があります。ピラミッドパワーがもらえるというので、験担ぎが嫌いでない私は、石棺の中に横たわってきました。その霊験はともかく、玄室へ向かう通路は大人一人がかがんでようやく通れる高さと幅しかなく、ピラミッドが完成してからでは石棺を運び入れることはできません。現代ほど技術が発達してない当時に、これほど緻密な計算のうえでつくられたピラミッドに感心しきりでした。

 古代エジプト人は、魂の不滅を信じていました。時間がたっても朽ちない石造りの建築は、そうした永遠性の象徴として考えられていたのではないでしょうか。

 いずれにしても、彼らの執念の強さは、お茶漬けをさらさらと食べる日本人も見習うべき特質であると感じてしまいます。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

ついに公開!ホテレス電子版 年間8,000円で!過去1年分の記事が読める!キーワードの検索もできる!トライアル版は無料!

大成建設 山内隆司の
世界の風に吹かれて 連載一覧

  • 山内隆司(やまうち・たかし)氏
  • 山内隆司