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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(14)
大倉喜八郎と鹿鳴館

週刊ホテルレストラン 2011年9月23日号掲載

明治6(1873)年、実業家大倉喜八郎によって創業された大成建設は、日本の近代化や戦後復興に大きく貢献してきた老舗企業だ。これまで国内外500以上ものホテル建設を手掛けてきた同社の歴史の中から、今回は、文明開化のシンボルとうたわれた鹿鳴館の建設にまつわるエピソードを語ってもらった。

 当社が多くのホテル建設を手掛けてきたことは、この連載でもご紹介させていただきました。国内外併せて500以上のホテル建設に携わっており、その歴史は古く明治時代へとさかのぼります。そこで、当社とホテル建設のかかわりについて、いくつかエピソードを紹介したいと思います。

 明治維新後の新政府は本格的な西洋建築を次々と建設し、近代国家であることを世界に示そうとしました。そうした文明開化のシンボルとなったのが、海外からの賓客や外交官をもてなす社交場として一斉を風靡(ふうび)した鹿鳴館です。

 鹿鳴館は、イタリアルネッサンス様式に英国風を加味した2階建て煉れん瓦が造り。舞踏会場となる大広間や、大食堂、宿泊施設を備えており、バーやビリヤード室まで設けられました。設計は、工部大学校(現在の東京大学工学部)の教官としてイギリスから招かれたジョサイア・コンドル。建設を請け負ったのが、明治政府の仕事を幅広く手掛けていた当社の創業者、大倉喜八郎です。いわば、当社の「ホテル建設の嚆矢(こうし)」とも言えるでしょうか。

 大倉喜八郎は、江戸末期の天保8(1837)年、越後の国の生まれ。17歳で江戸へ上京し、かつお節問屋の丁稚(でっち)を振り出しに次々に時流を読んだ商売を手掛け、明治維新とともに事業家への道を歩み始めます、明治5(1872)年には、横浜から出航し、アメリカ、イギリス、フランス他各国を19カ月かけて歴訪し、民間人として初めて欧米の商工業を視察しました。ロンドンとローマでは、明治政府から派遣されていた「岩倉使節団」とも面会し、殖産興業の重要性について語り合ったといいます。明治6(1873)年、帰国した喜八郎は、今日の総合商社にあたる「大倉組商会」を設立。一方で、大火により消失した銀座の復興策として進められていた銀座煉瓦街の建設に参画し、本格的な近代建築業へと進出していきました。そして、明治12(1879)年、時の外務卿(現在の外務大臣)井上馨に依頼されたのが、鹿鳴館の建設でした。

 幕末から明治にかけて、日本が欧米諸国と結んだ修好通商条約は、関税の自主権がなく治外法権を認めるなど不平等条約であったため、その改正は明治政府の悲願となっていました。井上は、日本文化が欧米並みであることを示すことで条約改正を有利に進めようと考え、西洋風の社交クラブ設立を推し進めました。明治16(1883)年、現在の内幸町に完成した鹿鳴館には、夜ごと各国の外交官や皇族、華族、政府高官たちが集まり、きらびやかな洋装でダンスに興じたといいます。しかし、上辺だけの欧化政策への批判や条約改正の決裂によって、井上が進めた「鹿鳴館外交」への風当たりは厳しさを増していきました。こうして鹿鳴館はわずか4年で社交場としての歴史に幕を閉じたのです。鹿鳴館は払い下げられた後、昭和15(1940)年に老朽化のため惜しまれつつ解体されました。

 一方、井上馨は、日本初の本格的な洋式ホテルの設立にも尽力します。井上の勧めで喜八郎は、渋沢栄一をはじめ日本を代表する財界人とともに発起人となり、明治20(1887)年、有限責任帝国ホテル会社を設立。当社の前身となる「日本土木会社」がその建設にあたりました。明治23(1890)年、初代帝国ホテルが鹿鳴館の隣に完成。ルネッサンス風の端麗な外観は、帝都(東京)随一の美観と称えられたそうです。喜八郎は、ホテル建設ばかりでなく、その後、長年にわたり帝国ホテルの会長または取締役として経営のかじ取りにも携わりました。

 次回は、著名なアメリカ人建築家、フランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテル新館について、ご紹介いたします。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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