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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(17)
日本初の超高層ビル、ホテルニューオータニ〈前編〉

週刊ホテルレストラン 2011年11月11日号掲載

東京オリンピックを間近に控えた東京では、海外からの観光客を迎える宿泊施設の建設が急務となっていた。日本で初めての客室1000室超クラスとなったホテルニューオータニの建設は、工事のすべてが未知への挑戦であったという。日本初の超高層ビルとなったプロジェクトの全容を2回シリーズで聞いた。

 昭和37(1962)年、ホテルオークラの開業から間もなく、東京に新たな国際級ホテルを建設する計画がスタートしました。日本初の超高層ホテルとなったホテルニューオータニです。

 昭和39(1964)年の東京オリンピック開催を間近に控えた東京では、世界中から訪れる観光客のためのホテル不足が大きな課題となっていました。そこで、時の東京都知事が国際級ホテル建設にふさわしい候補地として白羽の矢を立てたのが千代田区紀尾井町にある大谷米太郎氏の私有地でした。大谷氏は一代で大谷重工業を築き上げ、“鉄鋼王”と称された実業家。要請を受けた大谷氏は初めてのホテル事業に取り組むことを決意したのです。古くから大名屋敷や宮家の邸宅であった約2万坪の敷地は、都心にありながら堀割と石垣に囲まれた緑豊かな環境でホテル用地としては絶好のロケーションでした。そして、新ホテルの設計・施工を任されたのが、ホテルオークラなどのホテル建設の実績を評価された当社でした。

 まず、大谷氏が構想したのは客室数1000室以上という巨大ホテル。石垣や美しい景観を残しながら要求された客室数を満たすため、日本初の超高層ホテルが計画されました。最終建築計画は、17階建て・高さ72m。しかし、超高層建築を実現するには誰も経験したことのない工法に挑戦しなければなりませんでした。従来の鉄筋コンクリートは、太い柱や壁で地震の揺れを受け止める「剛構造」。階を高くするほど下の階に荷重がかかり、10数階以上のビル建設が難しかったのです。そこでプロジェクトチームが挑んだのが、当時、耐震構造の新理論として注目された「柔構造」でした。「柔構造」は、鉄骨で柱と梁をつくり地震の揺れを弱め吸収する構造にしたもの。鉄筋コンクリートに比べて柱や梁を細く軽量化できるため、超高層建築に適した構造でした。しかし、それまで日本では柔構造による実績は一件もありません。東京オリンピックに間に合わせるため工期はわずか17カ月。設計図の完成を待ってから工事を始めていては到底間に合いません。こうして設計と施工、新技術の開発を同時進行させるという前代未聞のプロジェクトがスタートしたのです。

 しかも、プロジェクトにはもう一つ大きな課題が立ちはだかっていました。工事を開始した昭和38(1963)年4月の時点で、日本の建築基準法は高さ31mを超える建築物(超高層)を許可していなかったのです。建築基準法改正はその年の国会で審議入りしましたが、法案の成立を待っていては到底間に合いません。そこで、建築許可申請は従来の法規に従って(5階建て)行ない、改正法が施行された昭和39(1964)年1月に計画変更手続きを行ったのです。法改正に伴い超高層ビルの建設には日本建築センターの建築確認が必要となりました。その建築確認第一号となったのがホテルニューオータニです。ホテルニューオータニは、日本の超高層ビル時代を開いたモニュメントとも言うべき建築物なのです。

 作業所では合理化のため、さまざまな新工法が開発されました。中でも工期短縮に大きく貢献したのがユニットバスの採用です。当社と東洋陶器(現在のTOTO株式会社)が共同開発を進め、浴室全体を工場で生産して現場に運び込む方式を採用しました。それまで欧米にもなかった画期的な工法が、後年ホテルや一般建築にも広く普及することになったのはご存じの通りです。

 このように試行錯誤の連続の中で、大幅な工期の遅れもなく進んでいた工事でしたが、工程が中盤に差し掛かったころ、大きな設計変更が舞い込んできました。それは「最上階のレストランを回転させたい」という事業主大谷氏からの突然の要望でした。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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