世界のリーディングホテルVOL14 ザ・リッツ・カールトン ニューヨーク バッテリーパーク

週刊ホテルレストラン　2011年12月23日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。
これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　ニューヨーク、マンハッタン島の南端にあるバッテリーパークに観光遊覧船の発着所があり、“自由の女神”が立つリバティー島やエリス島に向かう観光船は世界各国から観光客でにぎわっている。2002年1月にこの美しい公園に隣接してザ・リッツ・カールトンNY、バッテリーパーク（以下RC/BP）が開業した。

　バッテリーパークの名はニューヨークがまだニューアムステルダムと呼ばれていたころ、オランダからの移住者が外敵に備えるために砦として築いた砲台（バッテリー）に由来している。エリス島に移民審査局が建設される前は、ここが最初の移民受け入れセンターであった。各国から船に乗って来た移民者は“自由の女神”見て“自由の国アメリカ”に入国した訳だ。移民が進んだが、ワールドトレードセンター（WTC）建設のときに出た膨大な土や岩で再整備が進み、現在の美しいバッテリーパークとなっている。ちなみにWTCは「9・11」で崩壊してしまったが、ここから歩いて10分で“グランド・ゼロ”に着き、復興の建設現場を見ることができる。

　RC/BPの特徴は何と言っても“自由の女神”の羨望であり、ニューヨークで唯一その女神像を望める5ツ星ホテルである。もちろん、客室は「The Statue of Liberty View Room」に限られるが、本紙連載vol3で紹介したリッツ・カールトン香港にある望遠鏡と同じものが部屋に用意されている。望遠鏡をのぞくとリバティー島に俊立する“自由の女神”の横顔が、大きくはっきりと目に飛び込んでくる。

　ニューヨークには二つのリッツ・カールトンがある。もう一つはセントラルパークに面したリッツ・カールトン本来の重厚なたたずまいのホテルだ。一方こちらのRC/BPはロウアーマンハッタンの再開発計画の一端として建てられた新築のホテルである。すぐ近くにウォール街があるためビジネスマンの姿も多く、機能的なアーバンスタイルになっている。したがってロビーやラウンジの調度品、客室デザインなどもリッツ・カールトン的な重厚感はあまり感じられず、むしろモダンで軽快感の印象が強い。しかしホテルの実力、評価は非常に高いものがあり、「Institutional Inverstor」誌の2007年度ランキングで見事トップの評価を獲得し、続く08年度でも5位を維持するなど高評価を得ている。

　RC/BPは39階建ての「The Ritz-Carlton Residence」と共通の建物にあり、エントランスは左右に分かれている。ホテルは14階建て、40室のスイートを含む全298室のゲストルームを有し、メインダイニング「2 West」、スパ「The Ritz-Carlton Spa」、クラブラウンジ、フィットネスセンター、ビジネスセンターなどの施設を擁している。客室に備えられた望遠鏡から望む“自由の女神”、その姿は実に印象的でありRC/BP流の粋な計らいと随所に感じるホスピタリティーは、このホテルに宿泊したゲストの心をしっかりととらえて離さないであろう。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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