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  1. 大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて

大成建設 山内隆司の 世界の風に吹かれて(18)
日本初の超高層ビル、ホテルニューオータニ〈後編〉

週刊ホテルレストラン 2011年11月11日号掲載

東京オリンピックの開催に向けて、東洋一のホテル建設がスタート。限られた工期内で完成させるため、いくつもの新技術が開発されました。そうした中「最上階のレストランを回転させたい」という事業主から出された突然の要求。そこには戦艦大和の砲座を回転させる技術が応用されたのです。

 東京オリンピック開催に向けて、首都圏を中心にさまざまなプロジェクトが 同時進行していました。首都高速道路、東海道新幹線、東京モノレールなど。中でも外国人観光客向けの宿泊施設は圧倒的に不足しており、その対策として建設が進められたのがホテルニューオータニです。

 客室数1058室は、東洋一の規模。17階建ての高さは、当時の建築基準法の改正後に認可された日本初の超高層建築となりました。工期はわずか17カ月間。工事を担当した当社は、新しい工法、世界初のユニットバスなど、工事のスピードアップを図るための新しい技術を次々と開発し導入しました。そして、完成に向けて順調に工事が進行していたころ、事業主である大谷米太郎氏から突然の設計変更が。

 「最上階の展望レストランを回転させて、すべての外国のお客さまに日本が誇る富士山を見てもらいたい」。それが大谷氏からの要望でした。当時、観光地などには回転展望台がありました 。しかし、直径45mもの展望台を回転させる大規模な機構は世界でも例がありませんでした。また、どんなに眺望が素晴らしくても、足下が揺れていてはホテルのレストランとして失格です。当社は“コップの水が揺れない”スムーズな動きを目標にしました。

方々探した結果、戦時中、戦艦大和の主砲を回転させていた特殊な車輪技術に注目したのです。しかし、回転する台座の施工に求められる精度は数ミリ単位。少しでも誤差があるとレストランはスムーズに回転しません。機械の改良や調整のため度々工事は中断を余儀なくされました 。そして幾多の難関を乗り越えて迎えた試運転の日、レストランのテーブルの上になみなみと水を注いだコップが置かれました。1周約70分。関係者全員が固唾かたずをのんで見守る中、レストランは静かに回転し元の位置に戻りました。コップの水は一滴もこぼれていません。工事は成功です。このホテル建設に関する技術革新などのエピソードは、2005(平成17)年5月17日、NHKの“プロジェクトX~挑戦者たち~”という番組でも紹介され大きな反響を呼びました。

 ちょうど同じころ、建築計画の根幹を揺るがす思いもよらない別の問題が起きていました。当時、当社は富士山頂に世界最大級の気象レーダーの建設を進めていました。日本に近づく台風をいち早くレーダーでとらえ、台風映像を電波に乗せて東京の気象庁に送ることになっていました。しかし、富士山頂と気象庁を結ぶちょうど直線上にホテルニューオータニの建設が進んでいたのです。「ホテルが邪魔をして電波が届かないかもしれない!」と作業所に駆け込んできたのは、当時、気象庁の富士山レーダーの責任者で、後に作家となった新田次郎氏でした。作業所の誰もが、ホテルが電波障害になるとは想像もしていません。

検証の結果、完成しても最上階の回転展望台まで海抜102m。気象庁で事前に試算していた高さを超えないことが分かり、一同胸をなで下ろしました。そのとき、奇遇にも当社のレーダー工事の担当所長がホテル作業所に冬季応援で来ており、二人は思わぬところで対面するというドラマもありました。当時の経緯は、彼の著書である小説『富士山頂』や、先ほど触れた“プロジェクトX”の第1回目(2000(平成15)年3月28日放映)で取り上げられています。

 1964(昭和39)年9月1日。東京オリンピック開催まで1カ月を残し、ホテルニューオータニは無事にオープン。オリンピック開催期間中に約6万人の外国人を迎え入れました。その後、ホテルニューオータニで採用された新しい技術は、全国の高層ビル建設に生かされ、日本の高層建築に飛躍的な進化をもたらすこととなったのです。そして、ホテルニューオータニの回転レストランは、開業から約半世紀を経て今でも静かに回り続けています。

山内隆司(やまうち・たかし)氏プロフィール
1946年6月12日、岡山県・邑久町(現瀬戸内市)に生まれる。府立天王寺高、東京大学工学部建築学科を経て、69年6月大成建設(株)入社。建築畑を歩き、ヒルトン東京ホテル、そごう川口店、センシティタワーなどを手掛ける。99年6月執行役員関東支店長、2002年4月常務役員建築本部長、05年6月取締役専務役員建築本部長、06年4月取締役専務役員社長室長などを経て、07年4月代表取締役社長、現在に至る。

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