世界のリーディングホテルVOL36
ローズウッド クレッセントホテル Rosewood Crescent Hotel

週刊ホテルレストラン　2012年11月23日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　いかにもテキサスの大牧場にある邸宅を思わせるアーチ状のエントランスに迎えられて「Rosewood Crescent Hotel」の正面玄関に到着する。テキサス州ダラスは石油王ハント一族の本拠地で、H・L・ハントの娘、キャロライン・ローズ・ハントが1979年に「Rosewood Hotels & Resorts」を設立し、フラッグシップ・ホテル「Mansion on Turtle Creek」を開業させたのが始まりである。現在、ローズウッド・ホテルズは2011年に「Rosewood Corp」から、香港資本である「World China Land」のホテル管理部門「New World Hospitality」に売却され、ハント一族の手から離れている。

　クレッセントホテルは敷地内に18階建ての連続した3軒の巨大なオフィスタワーを持ち、センターオフィスの17階部分に高級会員制クラブ「The Crescent Club」を運営している。英国の伝統的プライベートクラブをモデルにしたもので、ダラスの富裕層の多くを会員にしている。ヨーロッパの館を意識したクラシカルな回廊を進んだ先に、複数のレストラン、バー、ライブラリー、プライベートサロンなどを用意している。また、ホテルの背後には高級ブランド店が軒を並べる大規模なショッピングセンターを併設するなど、ローズウッド・ホテルズのダラスでの本部所在地となっている。

　クレッセントホテルの建物は“Crescent”の由来である三日月の優雅な弧を描いており、連続する3軒のオフィスタワー棟もホテルに合わせて外側の弧を形成している。弧の中心部にショッピングセンターを据えた扇状の敷地レイアウトで、開業当初は「Crescent Court」というホテル名称であった。現在はこの複合コンプレックス全体の名称を指し、ダラスでの住所もクレッセントコートになっている。ホテルは29のスイートと191室のゲストルームを擁し、個性ある施設の中で特筆すべきはレストラン「NOBU」であろう。2005年にオープンした松久信幸氏のマイアミ店に続く開業で、照明を落としたクールな印象の店内では、すしバーから鉄板焼き、英文メニューで“OMAKASE”まであり深夜遅くまでダラスのセレブ層でにぎわっている。そのほか、テラスに面したオールデイダイニングの「The Conservatory」や、前述したクレッセントクラブでのゴージャスな食事や重厚なバー・コーナーも楽しめる。スパの「The Spa at the Crescent」は実に2000m²以上の面積を誇り、16のトリートメントルームを有する豪華な施設だ。トレーニングジムから屋外スイミングプールに出られ、ここからは優美な弧を描いたホテルの外観を望むことができる。

　クレッセントホテルはダラス中心部のオフィス街と住宅街の境に位置し、利便性と静寂性の環境を同時に享受できる。また、市内近距離でのリムジンサービスもあり、これを利用してダウンタウンや姉妹ホテルの“The Mansion”まで食事に行くこともできる。ローズウッド流のきめ細やかなホスピタリティーを含めて高い評価を与えたいホテルと言える。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

詳細をご覧になりたい方はPDFファイルをダウンロードしてください。