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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL55
ザ・セントレジスシンガポール The St. Regis Singapore

週刊ホテルレストラン 2013年9月13日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 セントレジスシンガポールは実に11年ぶりにシンガポールに誕生した国際的ラグジュアリーホテルで、東南アジア初進出のセントレジスでもある。立地も素晴らしく、オーチャードロードから一歩入った高級住宅街の一角、評価の高いフォーシーズンズとリージェントホテルに挟まれた理想的な環境にある。シンガポール観光の話題性はマリーナ地区に移行しつつあるが、まさに最高の立地を確保して王道を行く本格派のホテルが誕生したと言える。

 セントレジスの館内や外回りは何故かアートの雰囲気が漂っている。例えばコロンビアの著名な芸術家、フェルナンド・ボテロの大小の彫刻が其処かしこに置かれている。また、スペインの巨匠、ジョアン・ミロのスケッチ画やシンガポールの人間国宝、陳文稀(Chen Wen Hsi)の描いた絵画なども多く飾られており、アジアでも有数の美術品のプライベートコレクションを所蔵しているホテルだ。驚くのは、厳選されたこれらの貴重な美術工芸品がさり気なく置かれ、館内外のインテリア、エクステリアに花を添えていることである。

 セントレジスシンガポールは2008年にグランドオープンした。スイートを含め全299室のゲストルームを擁し、すべて24時間対応のバトラーサービスが付いている。筆者にアサインされた部屋は「Lady Astor Room」のカテゴリーで約56m²の広さがある。セントレジスの創始者J・J・アスター4世の実母であり、ニューヨークやロンドンの社交界のスターでもあったキャロライン・アスターの名を冠したチャーミングな部屋である。客室の広さはスタンダートタイプでも50m²を確保し、客室名称も「Executive Deluxe Room」から始まるという、シンガポールでも最大級の客室面積を保持している。レストラン・バーでは、メインダイニングでフランス料理の「Brasserie Les Saveurs」、広東料理の「YanTing 宴庭」、アフタヌーンティーが人気のラウンジ「The Drawing Room」、そしてメインバーの「AstorBar」などがある。スパはセントレジスNYでお馴染みの「Remede Spa」が米国以外で初ということで話題を提供している。隣接して用意されたフィットネスセンターとトロピカル・スパプールも好評だ。特にプールエリアは多くの植栽と噴水で癒やしの環境を演出し、プールサイドにはイタリア料理の「LaBrezza」が出店している。スパ内には日本の露天風呂を感じさせるオープンエアのジャグジーもあり嬉しい施設と言えよう。

 セントレジスシンガポールは開業後5年が経ち、多くの高級ホテルチェーンがしのぎを削る激戦区のシンガポールにあって、そのブランド・アイデンティティーを確立すべく奮闘中だ。部屋に入るとすぐに担当バトラーが挨拶と共に飲み物を提供し、翌朝にはモーニングコーヒーと新聞を希望の時刻に届けるなど、さり気ないコンプリメンタリーのサービスが充実しており、ホスピタリティー意識の徹底が感じられる。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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