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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL74 セタ パレス ホテル Settha Palace Hotel

週刊ホテルレストラン 2014年6月27日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ラオスの首都ビエンチャンにひっそりと佇む何とも愛らしい珠玉のホテルである。ホテルの名は「Settha PalaceHotel」。小規模ながらラオスで最も伝統と格式を誇るホテルだ。建物は仏領インドシナ時代のフレンチ・コロニアル様式を忠実に再現し優美な姿を見せている。開業は1932年まで遡るが、セタパレスの歴史は苦難の連続であった。フランスから独立しても内戦が続き、75年の革命後は人民政府がホテルを接収し、以後老朽化とともに荒廃も進み、かつての華やかなビエンチャンの社交場は見る影もない廃墟に変わり果てた。やがて改修の機運が強まり、5 年の歳月と膨大な費用と手間を掛けて99 年に再オープンを果たし、創業当時の麗しき姿の貴婦人が蘇った。

 ビエンチャンはラオスの首都であるが、高層建築は見当たらず、のどかな雰囲気が広がっている。市内中心部でも夜になると街路灯もまばらで、街はかなり暗い感じがする。海外ホテル勢はアコーホテルズ傘下のメルキュールとイビス等が進出しているだけで、ほかのメジャーなホテルチェーンは見当たらない。ホテルに関して言えば、世界遺産に登録された旧王宮のある古都であり、ホテルラッシュに沸くルアンパバーンの後塵を拝していると言えよう。

 セタパレスはスイートを含めても29 室という小規模なホテルだが、極めてクオリティーの高いラグジュアリーホテルである。筆者にアサインされた部屋はクラシカルな「Junior Suite」で、約45m²の広さを持つ心地よいスイートだ。ラオス様式を取り入れた紋様のソファセットとローズウッドの4 柱式のベッドが30 年代のコロニアルな雰囲気を出している。エントランスホールの右手に天井から旧式のシーリングファンが回るレセプションフロア、左手にはメインバー「La Belle Epoque Bar」がある。その先にフランス料理「La Belle Epoque Restaurant」を用意している。当初はフランスから一流シェフを招いて“ 東南アジアで屈指のフレンチ”と評価されたこともある名店だ。建物裏手の緑豊かなガーデンには小粋なスイミングプールがあり、デッキチェアからホテルを見渡すと、ノスタルジックなインドシナの懐かしい世界に迷い込んだ錯覚におちいる。

 セタパレスはもう一つレトロなものを用意している。ロンドンで退役した“ロンドンタクシー”だ。ホテルは年代物のタクシーを導入し磨き上げた後、ホテルリムジンとして空港送迎用に使用している。白の制服に身を包んだドライバーが小さな空港で待機し、ゲストを丁重に案内する光景は、周囲の観光客の視線が集まる瞬間でもある。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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