週刊ホテルレストラン HOTERES WEB

  • TOP
  • ホテル&レストラン
  • 業界コラム
  • ホテルビジネスなんでも相談
  • バイヤーズガイド
  • HITS
  • ホテレス電子版
  1. 世界のリーディングホテル

VOL99 ザ・ロイヤル クレッセントホテル&スパ
The Royal CresentHotel & Spa

週刊ホテルレストラン 2015年7月10日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 古代ローマ人がイギリス遠征の際発見した温泉がそのまま町の名前、バース「Bath」となった。ドイツのバーデン・バーデン「Baden-Baden」と同様に温泉という語源、歴史を持つ。バースで世界遺産に登録されるほどの美しい町並みを象徴する建築が、「Royal Crescent」という集合住宅である。イオニア式の壮麗な列柱に飾られた半楕円形の建物が独自のオーラを発し、その形に抱かれるように芝生と青空が広がる。ロイヤル クレセントは日本語で“ 三日月宮殿”と訳され、その規模と独創性から“ 世界で最も美しい集合住宅の一つ”と言われている。その三日月宮殿の中央に「Royal Crescent Hotel & Spa」の正面エントランスが控えめに佇んでいる。

 バースは18 世紀になるとロンドンの貴族や富裕な階層の保養地として大規模に再開発され、ジョージアン様式の建造物が数多く残っている。ロイヤル クレセントはその代表的建物であり、地上3 階、地下1 階建ての構成である。レジデンス住戸数は30 あり、向かって右からNo.1 が始まり、左端のNo.30 で終わる。建物は現在も住民が暮らしているので中には入れないが、東端のNo.1 のレジデンスは建設当時のインテリアを復元した博物館として一般公開されている。「Royal Crescent Hotel & Spa」はNo.15-16 をホテルとして使用する極めて珍しい構造を持ち、現在はRelais & Chateaux 加盟の人気ホテルである。

 ロイヤル クレッセントは建築家ジョン・ウッド父子が8年の歳月をかけ、1775 年に長さ180m の三日月宮を完成させた。ホテルは14 のスイートを含め全45 室の瀟しょうしゃ洒な館で、1987 年に開業している。筆者にアサインされた部屋は「Classic Suite」で、最上階から中庭が眺められる約45m²のスイートだ。草花が美しい中庭の向こうに別棟のダウアーハウスがあり、ファインダイニング「Dower HouseRestaurant」とバー「The Montagu」が入っている。かつて馬舎であった棟は、「The Spa & Bath House」のスパ施設となり、館内プール脇には五右衛門風呂を思わせる木製の丸浴槽があり日本の温泉を彷彿させるレイアウトだ。

 ロイヤル クレッセントは1987 年、「バース市街」の名称で、古代ローマ浴場などと共に世界文化遺産に登録されている。また、途絶えていた温泉施設は、2006 年にテルマエ・バース・スパ「Thermae Bath Spa」としてバース中心部にオープンした。古代ローマに思いをはせながら、世界遺産の歴史的ホテルに宿泊するという、バースで稀けう有な体験を楽しむのも一興であろう。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

詳細をご覧になりたい方はPDFファイルをダウンロードしてください。

ついに公開!ホテレス電子版 年間8,000円で!過去1年分の記事が読める!キーワードの検索もできる!トライアル版は無料!

世界のリーディングホテル連載一覧

  • 小原康裕