世界のリーディングホテルVOL24
グランドハイアット＆パークハイアット上海　Grand Hyatt & Park Hyatt Shanghai

週刊ホテルレストラン　2012年5月25日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する

　上海、これほどダイナミックに変化・成長して行く都市の姿は世界に類を見ない。躍動する中国の原動力が上海・浦東地区であり、そこの最初の本格的超高層ビルが88階建ての金茂大廈「Jin MaoTower」であった。グランドハイアット上海（以下GH上海）はこの金茂大廈の53－87階を占めて1999年にオープンした。開業当時は“世界で一番高層にあるホテル”のふれ込みで話題をさらったが、後にそのタイトルはお隣のパークハイアット上海に譲ることになる。

　ホテル内部は世界最大級の円筒形のアトリウムになっていて、客室外廊下の回廊がぐるりと吹き抜け部分を囲み、その近未来的デザインに驚かされる。逆に客室内はオリエンタルな趣の感があり、特にベッドボードに書かれた重厚な金文字の漢詩は見どころの一つだ。客室ごとに杜甫や李白などそれぞれ異なった漢詩が刻まれていて、蘇州の職人の手によってボードに彫られたといわれる。GH上海は45のスイートを含む全555室のゲストルームを有し、54階にあるロビーフロアにレセプションデスクを設けてある。86階にある「Club Jin Mao」は開業当時に上海一の高級会員制クラブであったが、現在は洗練された上海キュイジーヌとして一般客にも開放されている。

　一方、パークハイアット上海（以下PH上海）は2008年、上海環球金融中心「World FinancialCenter Shanghai」の79‐93階にオープンした。101階建ての上海環球金融中心は地上492mの高さを誇り、ご承知のように日本の森ビルが事業主体となって建設した上海一の超高層ビルだ。トップの部分にちょうど栓抜きのような形状をした空間があり、その先端部分100階にスカイウォークと呼ばれる展望遊歩道が設置されている。当初は円形の風通しの空間を設計していたが、“日の丸”に通じるということで抗議を受け四角状に変更したといわれる。スカイウォークからの眺めは圧巻で、88階建ての金茂大廈や東方明珠タワーを遥か下に臨むことになる。

　PH上海は32のスイートを含む全174室のゲストルームの構成で、87階にロビーフロアを設けている。レセプションデスクのあるラウンジで摩天楼の眺望を楽しんだ後、エレベーターを乗り換えて客室に向かう。客室はシンプル＆モダンを基調にしているが、バスルームは日本の風呂を手本にした洗い場一体型で、木製の風呂桶や竹籠を用意した“和”の雰囲気だ。91‐93階は「100 CenturyAvenue」と呼ばれるレストランフロアになっており、さまざまなスタイル、国籍の料理を堪能できる。85階にはスパ「Water's Edge Spa」があり、インフィニティープールで泳ぐ爽快感はまさに天空のオアシスと言える。

　上海の開発スピードはとどまることを知らない。既に上海中心大廈「Shanghai Tower」の建設が2008年より始まっていて、14年には地上632mの高さを誇る121階建ての超高層ビルが完成する。現在、“世界で一番高層にあるホテル”は香港のリッツ・カールトンに移っているが、再びそのタイトルは上海に戻って来そうだ。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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