世界のリーディングホテルVOL37
フォーシーズンズホテル香港 Four Seasons Hotel Hong Kong

週刊ホテルレストラン　2012年12月14日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　フォーシーズンズ香港には世界の高級ホテルがどうしても太刀打ちできない“凄み”を持っている。それは、ミシュラン3ツ星レストランを2軒も館内に有していることである。一つは広東料理の「Lung King Heen・龍景軒」であり、もう一つはフランス料理の「Caprice」である。「龍景軒」は2008年版ミシュランガイドで香港初、そして唯一の3ツ星を獲得して香港のレストラン業界に新風を巻き起こした。続いて10年には「Caprice」が3ツ星の栄誉を手にして世界のホテル業界に多大な影響を与えた。かつてはホテル内レストランが3ツ星を獲得することは極めて稀であったが、“2軒の3ツ星レストランを抱える世界唯一のホテル”として、今回その名を世界に知らしめた訳である。

　フォーシーズンズ香港は88階建て地上415mの超高層ビル“国際金融中心II”「Two International Finance Centre」をコアに開発された巨大なショッピングセンター“IFCモール”の一角に2005年秋にオープンした。ホテルは55階建て、地上205mの高層ビルで客室は9階から43階までを占めており、左隣の建物は「Four Seasons Place」の名称で高級レジデンスとなっている。IFCモールの地下にはエアポート・エクスプレスの香港駅があり香港国際空港と直結し、さらに地下鉄MTRのセントラル「中環駅」とも接続しておりアクセスはすこぶる良い。また、香港駅には豪華なホテル専用SUVが待機して、空港から到着したゲストを随時ホテルまで送迎してくれる。

　ホテルは54のスイートを含む全399室のゲストルームを擁し、正面玄関を抜けると6階まで吹き抜けの巨大なエントランスホールに目を奪われる。左手にあるレセプションデスクの奥に、ピアノの生演奏が楽しめる「The Lounge」があり、逆にホール右手を進むと落ち着いた雰囲気の「Blue Bar」に行き着く。4階には中国人総料理長の陳恩徳が腕を振るう広東料理「龍景軒」と、以前ジョルジュサンクの「Le Cinq」で活躍したフランス人シェフ、ヴィンセント・ティエリが6階に店を構える「Caprice」という、前述した2軒のミシュラン3ツ星レストランがある。「Executive Club Lounge」は45階に位置するが、いわゆるクラブフロアというものはなく、どの客室のゲストもラウンジ使用の追加料金で利用できるシステムである。また、四つの異なるプールから構成されたオープンエアのスイミングプールからは、ヴィクトリアハーバーと九龍サイドの超高層ビル群の壮大な眺めを堪能でき、この様な広大な面積を持つホテル内プールは世界に類を見ない。

　世界中の高級ホテルが競い合う激戦区の香港にあって、フォーシーズンズ香港の評価は非常に高い。事実、05年秋に開業して間もない07年から10年まで4年間にわたり、『Institutional Investor』誌のトップ10に連続ランクインする快挙を成し遂げている。空港と直結した立地の良さ、宿泊・料飲部門におけるホスピタリティーのセンス等々、香港で揺るぎない信頼を保持するホテルである。

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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