世界のリーディングホテルVOL46　アルマーニホテルドバイ ARMANI Hotel Dubai

週刊ホテルレストラン　2013年4月26日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

　高さ828mを誇る世界一の超高層ビル、“ブルジュ・ハリファ”「Burj Khalifa」にジョルジュ・アルマーニ社がドバイ最大手の政府系不動産デベロッパー「Emaar Properties PJSC」と手を組んだ最初のプロジェクトである。両社はインテリアデザインからサービスコンセプトまでアルマーニの美意識に貫かれたホテルやリゾート、レジデンスを世界規模で開発経営する「Armani Hotels & Resorts」社を設立し、最初のホテルである「アルマーニホテルドバイ」を2010年4月にオープンさせた。アルマーニの研ぎ澄まされた美意識と、彼が長年心に描いてきたエレガントな住空間がホテルという形に結晶された訳だ。“Stay with ARMANI”と掲げたアルマーニブランドは、ここドバイでホスピタリティー業界へ鮮烈にデビューする事となった。

　ホテルはスイートを含め全160室を擁し、ブルジュ・ハリファのグランドフロアから8Fまでとスイート専用の38・39階を占める。途中の9－16階は144戸から成る高級コンドミニアムの「アルマーニ・レジデンス」となっている。アルマーニの黒服を着たドアマンに案内されエントランスホールに入ると、ホテルのロゴマークをイメージした巨大なメタルストラクチャーのアーチに圧倒される。レセプションデスクは一応あるが、通常はライフスタイル・マネージャーが出迎えに来て、ロビー奥にあるラウンジで手続きしてもらう。

　館内には8つのレストラン・バーがあり、本格的なイタリア料理「Armani/Ristorante」、地中海料理「Armani/Mediterraneo」、インド料理「Armani/Amal」、日本料理「Armani/Hashi」など世界中の美食が集結している。122階にはエマール側が運営する“世界一の高層階レストラン”と認定された「Atmosphere」があり、その圧倒的眺望で予約が難しいくらいの人気店だ。「Armani/Spa」にはオープンエアのスイミングプールが併設しており、ブルジュ・ハリファの外観を直下から眺められる。客室廊下はアルコーブが排除された直線で貫かれ、さらにドアノブも無いためスタイリッシュな異空間の雰囲気だ。筆者がアサインされた客室「Armani Classic Room」は、リビングとベッドルームが分かれたジュニアスイート・タイプで、約70m²の広さがある。室内は曲線を多用した壁面がユニークで、引き戸の効用も相まって独特のデザインレイアウトである。ミニバーにはアルコールは無いがすべてのドリンクがコンプリメンタリーというのも嬉しい。

　ブルジュ・ハリファの建物はメタリックな近未来的外観を持つが、上空から見るとこの地域特有の砂漠に咲く花「ヒメノカリス」の花弁をイメージした繊細な形状でもある。したがってホテルの客室フロアも花びらが中心から3方に開花した形で廊下が広がっている。124階にある展望台「At TheTop」から見渡すと超高層ビルが林立する壮大な景観に思わず圧倒される。ドバイから世界に進出したエマール社と手を結んだアルマーニホテルズの今後の世界展開が期待される。（本誌Vol 42、Armani Hotel Milano参照）

筆者　小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健（株）代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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