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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL27 ラッフルズ北京&北京飯店 Raffles Beijing & Beijing Hotel

週刊ホテルレストラン 2012年7月13日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する

 北京飯店は中国を代表するホテルとして長い歴史を誇る。清代末の1900年に洋風レストランを開業し成功したフランス人が、翌年“Hotel de Peking”「北京飯店」の看板を掲げたことに始まる。15年にフランス系銀行基金により5階建て煉瓦(れんが)造りの本格的西洋式ホテルが建てられ大々的に開業した(北京飯店A座)。その後17年には増大する外国人訪問客に対応するため、当時最新鋭の設備を誇る7階建てコロニアルスタイルのエレガントな新館が完成する(北京飯店B座)。この建物こそがラッフルズ北京のルーツであり、フランスのエスプリが効いた内装と当時は市内最高層の建物ということで話題をさらった。

 戦後は1949年に共産党中国が建国され、中国建築界の威信を賭けた新館が華々しく加えられた(北京飯店C座)。特に新中国誕生を祝うために復古調で中国的色彩が濃い巨大なバンケットホールがC座に建設され、政府・共産党の重要な会議や各国要人との宴会に利用されことになる。その後古く手狭になった旧A座を取り壊し、74年に20階建て地上89mを誇る当時北京最高層であった現在の北京飯店A座が完成した訳だ。さらに2001年にはB座建物の裏手に新しいビルが加えられ、ラッフルズ北京新館(E座)とオフィスビル(D座)として運用されている。以上が北京飯店ABCDE座の位置関係であり、驚くことにC座に隣接して建つ北京貴賓楼飯店まで内部回廊でつながっている。広い長安街から俯瞰すると北京飯店A座から貴賓楼飯店まで大きな軍艦のような一つの建物に見える。

 ラッフルズ北京はこの現存する最古の建物であるB座を大改修して2006年にオープンした。08年の北京オリンピック開催時は大会組織委本部が北京飯店に置かれ、ラッフルズ北京には多くの大会役員・賓客が宿泊したといわれる。全171室のゲストルームのうち、居間と寝室が分かれたビジネス系の「RafflesInc Executive Room」などは新館のE座に集まり、クラシカル系の「Landmark Room」やスイートルームは本館側のB座に置かれている。ユニークなのは「Personality Suite」と呼ばれる著名人の名称の付いたスイートである。それぞれ、孫中山(孫文)、張学良や郭沫若、さらにシャルル・ド・ゴール、バーナード・ショウなど、故人の功績をたたえて九つのパーソナリティー・スイートが存在する。クラシカルな本館ロビー奥から新館E座に行く途中に大きな吹き抜けの空間が開けており、トップライトが明るいモダンな雰囲気へと変化する。吹き抜けの中央には空中に浮いた船をイメージしたカフェテラスを配し、その周りに「Raffles Amrita Fitness」やオープンキッチンの「East 33」がある。本館ロビー階には1920年代の華やかさを彷彿させるメインダイニング「Jaan」とメインバー「Writers Bar」が賑わいをみせる。

 上海外灘と違って北京には重厚感溢れる歴史的西洋建築が少ない。その中でラッフルズ北京の優雅なコロニアルスタイルを持つホテルは、北京では唯一無二の存在であろう。この貴重でエレガントな“貴婦人”をいつまでも大切に守っていきたいものである。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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