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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL31 ザ・コノート The Connaught

週刊ホテルレストラン 2012年9月14日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ロンドン最高のロケーションを誇るメイフェア地区の一角に、葉を大きく広げた古木が2本立つ不思議な空間がある。ここに去年2011年7月、建築界の巨匠、安藤忠雄氏の手による噴水池がお披露目された。「沈黙」と名付けられたこのオブジェの真正面に煉瓦(れんが)造りの麗しいホテル、ザ・コノートが建っている。

  ホテルの誕生は1897年で、開業当初はコーブルク・ホテルと呼ばれていた。ヴィクトリア女王の夫君であるプリンス・アルバート・コーブルクから名付けられた。その後、1917年にヴィクトリア女王の第三王子である、プリンス・アーサー・コノート公爵の名を冠して「The Connaught」という現在の名称に変えられた。コノートはクラリッジズやバークレーと共に、現在は“メイボーン・ホテルグループ”「Maybourne Hotel Group」によって所有、運営されている。(本誌Vol 28、The Savoy参照)

 ドアマンに迎えられて館内に一歩入ると、ロンドン郊外の瀟洒なマナーハウスにあるようなコンシェルジュデスクに目を奪われる。その脇からマホガニーの重厚な階段がカウンターを囲むように上へ延びている。顧客の一人であるラルフ・ローレンがこの階段をいたく気に入り、自分の店に同じ階段を造らせたという逸話もあるくらいだ。エントランスホール左手にブラスリー・スタイルの「Espelette」があり、優雅な弧を描いた店内で楽しむアフタヌーンティーは人気の一つだ。食通のもう一つの楽しみはフランスから招いた女性シェフ、エレーヌ・ダローズ率いるミシュラン2ツ星のメインダイニング「Helene Darrozeat the Connaught」だ。彼女は「Le Louis XV」でアラン・デュカスに師事した後、パリでレストラン「Helene Darroze」をオープンし、ミシュラン2ツ星(現1ツ星)を獲得している。奇しくもエレーヌの前任者は同じ女性シェフのアンジェラ・ハートネットで、彼女がゴードン・ラムジーの愛弟子として腕を振るっていたレストラン名は「The MENU」であった。つまり、コノートは2代続けて女性シェフにメインダイニングを委ねたことになる。

 コノートにはもう一つ注目の施設がある。あのアマン・スパ「Aman Spa」だ。アマンリゾート自身以外のホテルで、アマン・ブランドのスパを最初にオープンさせた異色のスパである。大都市ロンドンの、しかもメイフェアの地でアマン・スパが体験できるとあって高い評価を得ている。コノートは、ガイ・オリバーを始めとして多くの個性派デザイナーを登用し、7千万ポンドを掛けた大改修プロジェクトを断行した。その位置づけは“時間を超えた個性あふれるラグジュアリーなデザイナーズホテル”とコンセプトに謳っている。

 コノートのホテル名称変遷の歴史からして、クラリッジズより由緒正しき出自のホテルに見えるが、なぜか堅苦しい伝統に縛られない自由な空気を感じさせる。エレーヌ・ダローズの繊細な料理、アマン・スパのモンスーンの匂い、そして安藤忠雄氏の噴水池と風にそよぐ木々の梢…。最も英国伝統色の強いメイフェア地区にありながら、華やかな女性の香りとアジアンの風を感じ取ったのは筆者だけであろうか。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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