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  1. 世界のリーディングホテル

VOL94 ベルモンド ホテル・チプリアーニ Belmond Hotel Cipriani

週刊ホテルレストラン 2015年4月24日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ベニスの中心、サン・マルコ広場にあるホテル所有の桟橋からゲスト専用のクルーザーでわずか数分。大型の野外スイミングプールや美しい芝生のガーデン、テニスコートなどベニスではほかに例を見ない広大な敷地を有するホテルがある。ホテルの名は「Belmond HotelCipriani」。ジュデッカ島の先端に位置する「BelmondLtd」のフラッグシップホテルである。1980 年および1988 年のベネチアサミットでは目の前にあるサン・ジョルジョ・マッジョーレ島の教会で開催されたが、多くの首脳もこのホテルに滞在し、その名声を世界に知らしめた。

 ベニスはアドリア海のラグーンに杭を打ち込み、人工的に造られた運河の街だ。したがって、ベニス本島にある建物は狭い敷地に密集している。また、歴史的建造物も多数存在し増改築は至難の業であり、ホテルにとって自前の庭園やプールを有するなど不可能に近い。そんな状況下、チプリアーニの利便性と広大な敷地は大きな魅力だ。なにしろ、優雅なプールでひと泳ぎした後に街にショッピング。専用クルーザーでサン・マルコ広場まで数分で送迎してもらえる。ベルモンド(旧Orient-Express Hotels Ltd)は、1976 年にこのチプリアーニの購入と同時に創設された。以来、オリエント・エクスプレス(=VSOE)の運行や45 軒のラグジュアリーホテルを世界に展開している。

 専用クルーザーで船着場に到着すると、瞬く間にジュデッカ島の自然に溶け込んだ麗しきホテルに目を見張る。チプリアーニは客室48 とスイート47、合計95 室という贅ぜいたく沢な客室構成である。筆者にアサインされた部屋は、最上階の「Lagoon View Suite with Balcony」で、専用階段を上がり独立したテラスからベニスの圧倒的景観が望める。メインダイニング「Oro Restaurant」では、ミシュランの星を獲得したダヴィデ・ビセットの料理を堪能したい。「Cip’sClub」はデッキテラスが特徴で、オリジナルのベリーニが楽しめる。スパ「Casanova Wellness Centre」は、伝説の色男カサノヴァにちなんで命名された。ホテルの庭園は、かつてカサノヴァが愛人と密会していた場所と言われる。

 ベニスは世界中からの観光客を飲みこみ、混沌とした演劇の世界を映し出すような街だ。チプリアーニは世界で最も混雑する観光地にありながら、ほとんど人に会うこともなく静かな休日を過ごせる。それはジュデッカ島という、天国の離島にあるゆえんだ。ベニスの街を劇場に例えると、ラグーンとドゥカーレ宮殿の眺めを独り占めするチプリアーニは、まさに貴賓席と言ったところだろうか。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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