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  1. 世界のリーディングホテル

世界のリーディングホテルVOL83
ホテル カンプ ヘルシンキ Hotel Kamp Helsinki

週刊ホテルレストラン 2014年11月14日号掲載

世界にはまだまだ日本人が訪れていないホテルがある。このコーナーではホテリエが知っておくべき「世界のリーディングホテル」を紹介する。これまで多くのホテル紹介本が出版されてきたが、そのほとんどが現地のホテルと事前に取材の連絡を取り合い、プロのカメラマンや通訳、そのほか大勢を連れ立っての大名取材であり、宿泊は省略といったことも多々であった。本連載では、著者自身が長年にわたる個人旅行中に自分の目で感じ取り、コメントを書き込み、自分のカメラで思いのままを撮ってきた写真を掲載する。

 ヘルシンキの迎賓館とも言える屈指の歴史を誇る名門ホテルである。ホテルの名は「Hotel Kamp」。市内中心部の高級ブランド店が並ぶ美しいエスプラナーディ通りに面して、老舗ホテルの存在感を放っている。ホテルはレストラン業で財を成したCarl Kamp によって建てられ、彼の名前を付けたホテル“Kamp” は1887 年に華々しく開業した。幾多の変遷を経て、1965 年に老朽化した建物は再建されるが、オーナーのKOP Bank(現Nordea Bank)が95 年までの30 年間を銀行として営業することとなる。ホテルとしての改装工事は96 年より始まり、99 年にスターウッドグループ傘下のラグジュアリーコレクションの一員として再出発を果たした。

 森と湖の国フィンランドは自国を「スオミ」と呼び、ほかの北欧諸国とは違う東洋系の国家である。長いことスウェーデンに支配され文化的にも深く影響を受けている。その後20 世紀初頭に独立するまで、今度は帝政ロシアの自治国として甘んじていた。それゆえ日露戦争で日本がロシアに勝利したことで、東郷元帥をラベルに張った「東郷ビール」が地元で大人気を得たという逸話も残っている。このよう様にヘルシンキの街はいわゆる“ ヨーロッパの風景”とは異なる印象を受け、古典的建物と近代建築が調和を保っている。

 ホテルカンプはスイートを含め全179 室のゲストルームを擁し、新古典主義建築の傑作とも言えるファサードが印象的だ。正面エントランスは新館側にあり、吹き抜けの華麗なレセプションホールがゲストを出迎える。筆者にアサインされた部屋は旧館側にある「Executive Room」で、約40m²の広さを持つクラシカルな部屋だ。旧館中央に歴史の重みを感じさせる重厚な階段があり、グランドフロアの「Brasserie Kamp & Bar」に続いている。メインダイニング「Brasserie Kamp」は伝統料理にモダンなスタイルを加味したヘルシンキで最高の格式を誇る。「Bar Kamp」はエスプラナーディ側にテラス席を設け夏は気持ち良い。そのほか、アジアンテイストの「Restaurant Yume 夢」も人気の店だ。最上階の8 階には「Kamp Spa by ESPA」を用意し、地元のセレブリティ―から高い評価を受けている。

 ヘルシンキは母国フィンランドが北欧4 カ国で唯一、王室を戴く歴史のなかった共和国として建国されたため、圧倒的存在感を放つ壮麗な建造物は少ない。市内のホテルは比較的新しいものが多く、首都でも5ツ星クラスのホテルが希少なヘルシンキにあって、ホテルカンプは別格の存在であり市民の誇りでもある名門ホテルと言えよう。

筆者 小原康裕
ホテルジャーナリスト。慶応義塾大学法学部法律学科卒。74年Munich Re入社。85年築地原健(株)代表取締役。2001年投資顧問会社原健設立、代表取締役CEO。JHRCA、日本ホテルレストランコンサルタント協会理事。

※現在、著者のホームページで「世界のリーディングホテル」を連載中。多くの美しい写真と興味深いコメントで、世界中のホテルとそれら関連都市を紹介。ホテルだけにとどまらず、オリエントエクスプレスなど鉄道関係の掲載、季節刊行で世界遺産の案内などさまざまな情報が得られる。www.jhrca.com/worldhotel

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